2025年12月16日、国内金融大手SBIホールディングスとブロックチェーン企業のStartale Group(スターテイル・グループ)は、日本円建てステーブルコインの共同開発に向け基本合意書(MOU)を締結したと発表しました。
SBIによると、今回の基本合意は日本円建てステーブルコインの実用化を見据えたもので、日本の金融規制に準拠した信託型の「3号電子決済手段」として設計されている点が特徴です。
両社は、当該ステーブルコインをプログラマブルかつグローバルに利用可能なデジタル通貨として開発し、国内外で流通させることで、多様な決済ニーズに応えることを目指しています。
発表によれば、この構想を実現するため、SBIとスターテイルは技術面と金融面で以下のように役割分担を行うとしています。
こうした体制のもとで開発が進められ、発行開始時期は規制や制度整備の状況を踏まえた上で2026年度第1四半期(4月〜6月)になる見通しです。
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今回開発される円建てステーブルコインは、信託銀行を通じて発行される「3号電子決済手段(特定信託受益権)」に分類されます。
この3号電子決済手段に該当するステーブルコインは、制度上の特徴として、資資金移動業者が発行する「1号電子決済手段」と異なり、送金額や保有額に100万円の上限規制の対象外とされています。
実際、こうした制度上の違いを具体的に見ると、10月に国内初のステーブルコインとして発行開始された「JPYC」は1号電子決済手段に該当し、送金額に上限が設けられていました。
両社の発表によれば、こうした制約を受けにくい信託型の特性を生かし、新たな円建てステーブルコインは日本をはじめ各国の金融規制に準拠しつつ、あらゆるRWA(現実資産トークン化)を支える決済インフラとして機能するとしています。
この構想に基づき、SBIグループの新生信託銀行が発行・償還を担い、グループ会社のSBI VCトレードが電子決済手段等取引業者として流通を促進する方針です。
この円建てステーブルコインを軸に、SBIグループ各社も投資家によるステーブルコインの導入支援を進めていくとしています。
SBIホールディングスの北尾吉孝社長は「現実資産のトークン化が不可逆的な潮流である」と指摘し、円建てステーブルコインの国内外での流通によって既存金融と融合したデジタル金融サービスの提供を加速させる意向を示しました。
スターテイルの渡辺創太CEOも「円建てステーブルコインがオンチェーン社会で中核的な役割を果たす」と述べ、日本をオンチェーン革命の中心地にすべく尽力する考えを示しています。
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日本におけるステーブルコイン市場では、近年の法制度整備を背景に実用化に向けた動きが進んでいます。
2023年6月の改正資金決済法施行によって国内でのステーブルコインの法的な位置付けが明確化され、銀行・信託会社・資金移動業者による発行が解禁されました。
これにより、国内でも銀行や民間企業によるステーブルコイン活用の動きが具体化しつつあります。
こうした制度整備を背景に、国内初の事例として北國銀行が2024年4月に預金担保型ステーブルコイン「トチカ」を発行開始しており、日本の銀行による円建てステーブルコイン提供の先駆けとなりました。
その後、民間企業による取り組みも進展し、改正法の枠組み下でJPYC株式会社により日本初の円建てステーブルコイン「JPYC」が2025年10月に正式リリースされています。
JPYCは改正後の資金移動業者ライセンスを取得した初の事業者となり、サービス開始からわずか2日で発行量が5,000万JPYCを突破するなど、市場からの強い需要を示しました。
こうした動きの中で、SBIホールディングスも円建てステーブルコイン領域への参入を進めており、国内外での円建てステーブルコイン活用を一段と押し上げる契機になると期待されています。
規制に準拠した信頼性の高いステーブルコインが出揃うことで市場競争が活発化し、日本発のデジタル通貨による新たな金融インフラ構築競争が本格化していく見通しです。
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Source:SBI発表 / Startale発表
サムネイル:Startale発表より使用

