ビットコインの不変性巡り議論に 暗号資産(仮想通貨)取引所マウントゴックス(Mt.Gox)の元CEOであるマルク・カルプレス(Mark Karpeles)氏が、2011年に同取引所がハッキングされたことで流出した約79, […]ビットコインの不変性巡り議論に 暗号資産(仮想通貨)取引所マウントゴックス(Mt.Gox)の元CEOであるマルク・カルプレス(Mark Karpeles)氏が、2011年に同取引所がハッキングされたことで流出した約79, […]

マウントゴックス元CEO、約8万BTC回収でビットコインハードフォーク提案。GitHubで一時クローズに

2026/03/02 11:04
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ビットコインの不変性巡り議論に

暗号資産(仮想通貨)取引所マウントゴックス(Mt.Gox)の元CEOであるマルク・カルプレス(Mark Karpeles)氏が、2011年に同取引所がハッキングされたことで流出した約79,956BTCの回収を可能にする「ビットコインのハードフォーク案」をGitHub上で2月28日に公開した。

対象となるのは、2011年6月の不正侵害後に約8万BTCを受け取ったアドレス「1FeexV6bAHb8ybZjqQMjJrcCrHGW9sb6uF」だ。当該コインは15年以上にわたり移動が確認されておらず、現在価格で約52億ドル(約8,131億円相当)規模にのぼる。

カルプレス氏は、この特定アドレスにロックされた未使用トランザクション出力(UTXO)について、マウントゴックスの回収用アドレスからの署名によって支出可能とする新たなコンセンサスルールを追加することを提案。既存の日本の裁判所監督下にある民事再生手続きを通じて、債権者へ返還することを想定している。

提案では、新たなスクリプト検証フラグ「SCRIPT_VERIFY_MTGOX_RECOVERY」を追加。対象アドレスのP2PKHスクリプトに限り、公開鍵ハッシュを回収用アドレスのものへ置き換える仕様としている。

発動は将来の特定ブロック高で行われる設計だが、現時点では「INT_MAX(実質無効)」に設定されており、コミュニティの合意なしには有効化されない。

なお、この変更は「これまで無効だったトランザクションを有効にする」ため、ソフトフォークではなくハードフォークに分類される。ネットワーク全体のアップグレードが必要となる。

カルプレス氏はこの提案を、「ビットコイン開発プロセスを迂回するものではなく、議論の出発点」と説明している。

2011年6月、マウントゴックスのシステム侵害により約79,956BTCが攻撃者の管理下に移動したとされる。当該アドレスはビットコイン史上でも広く追跡されてきた著名なUTXOのひとつだ。

マウントゴックスは2014年に破産し、その後日本の民事再生手続きへ移行。管財人である小林信明氏の管理のもと、約20万BTCが回収され、2024年半ばから債権者への弁済が開始された。

一方で、今回対象となる約8万BTCの秘密鍵は攻撃者が管理しているとされており、従来の方法では回収不能とされてきた。

カルプレス氏は、これらのBTCを、盗難であることに争いがなく、15年間移動がないこと、また、既に裁判所主導の分配枠組みが存在する点、対象は単一アドレスのみといった点を「極めて例外的なケース」として強調した。

また、提案は同時に、重大な懸念も認めている。

最大の論点は「ビットコインの不変性(イミュータビリティ)」だ。特定UTXOの所有権ルールを後から変更する前例を作れば、一度できたなら、またできるという議論につながりかねない。

今回の提案に対しては、複数の懸念点が指摘されている。まず、どの盗難事例が救済に値するのかという根本的な問題だ。特定のケースだけを例外的に扱うことになれば、将来的に他の大規模ハッキング事案との線引きが避けられない。たとえば、2016年のビットフィネックス(Bitfinex)のハッキング事件や、近年相次いだDeFi(分散型金融)プロトコルからの巨額流出事案なども、同様の対応を求める可能性がある。どの基準で例外を認めるのかという判断は、技術的というよりも政治的・社会的な問題に発展しかねない。

さらに、ハードフォークを実施する場合には、ネットワーク全体の合意形成が不可欠となる。アップグレードに反対するノードやマイナーが一定数存在した場合、チェーン分裂(チェーンスプリット)が発生するリスクも否定できない。また、日本の民事再生手続きという特定法域の法的枠組みと、グローバルに分散したビットコインネットワークのコンセンサス変更が交差することによる、法的整合性の問題も新たな論点となる。

一方で、賛成論も存在している。マウントゴックス破綻によって損失を被った数万人規模の債権者救済につながる可能性があるためだ。すでに裁判所監督下の分配スキームは稼働しており、回収さえ実現すれば資金を正当な権利者に戻す制度的基盤は整っている。

また、技術的観点から見れば、変更内容は限定的であり、実装規模も50行未満とされる。汎用的なコンセンサスルールを改変するものではなく、単一アドレスに限定したハードコードの例外措置である点も強調されている。加えて、ビットコインは過去にも例外的な対応を行った前例がある。2010年のバリューオーバーフローバグ修正や、2013年のBIP-50をめぐるチェーン分岐対応などがその例として挙げられる。

さらに、仮に攻撃者が秘密鍵を失っている場合、当該約8万BTCは事実上バーン(永久消失)された状態にあるともいえる。回収が実現すれば、それらは再び経済活動に組み込まれることになる、という主張も支持派からは示された。

なお、この提案はビットコインのGitHubリポジトリにプルリクエストとして投稿されたが、自動モデレーションにより一時クローズ。その後、スパム扱いでロックされた。

ビットコインコア開発者の@sipa氏は、「コンセンサスルール変更の議論はビットコイン開発メーリングリストで行うべき」とコメントしている。

マウントゴックスは2009年に東京を拠点として設立された暗号資産取引所だ。2011年以降複数回ハッキングを受け、大量のビットコインを流出させた結果、2014年に経営破綻している。

参考:提案
画像:iStock/stsmhn

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