イーサリアム(Ethereum)の共同創設者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、イーサリアムにおけるデータ可用性および実行レイヤーの技術的進展を踏まえ、いわゆる「トリレンマ」について、解決が現実的な段階に入りつつあるとの認識を示した。同氏が2026年1月3日、自身のXアカウントで言及した。
ブテリン氏が指す「解決」とは、分散性を損なうことなく、ネットワークの処理能力や帯域を拡張できる技術的前提が整いつつあるという意味合いを持つ。これまでイーサリアムでは、コンセンサスの安全性を保つために、すべてのノードが計算や検証を複製する必要があり、スケーラビリティの向上は分散性とのトレードオフになっていた。
これに対し同氏は、コンセンサス層におけるデータ可用性の課題については、データ可用性サンプリング技術「ピアDAS(PeerDAS)」によって、(主にレイヤー2が投稿する)ブロブ(blobs)などのデータについて、全ノードがすべてのデータを保持・検証しなくても、データ可用性を安全に保証できる構造が実用段階に入ったと説明している。また、実行レイヤーについては、ゼロ知識証明を用いた実行環境である「zkEVM」についても、実運用に耐えるパフォーマンス水準に到達していると述べている。一方で、安全性が残る課題である点も示した。
同氏は、これらの技術的進展について「小幅な改善ではなく、イーサリアムを根本的に新しく、より強力な分散型ネットワークへと移行させるものだ」と表現した。そのうえで、論文上の構想ではなく、すでに稼働しているコードによる進展である点を強調している。
ブテリン氏は、従来のP2Pネットワークの例として、ビットトレント(BitTorrent)とビットコイン(Bitcoin)を挙げた。ビットトレントは高い分散性と帯域を持つ一方でコンセンサスを備えず、ビットコインは分散性とコンセンサスを備える一方で、計算や検証が複製型であるため帯域が制約されていると指摘した。
これに対し、ピアDASが導入されたイーサリアムと、今後段階的な導入が見込まれるzkEVMの組み合わせにより、分散性、コンセンサス、高帯域を同時に備えたネットワーク構造が現実的になりつつあると主張している。同氏はこの状況を「論文上ではなく、稼働するコードによる解決」と表現している。
あわせて同氏は、今後のロードマップとして、約4年の見通しの中で、2026年にZK依存ではない形でのガスリミット引き上げとzkEVMノード稼働の初期機会、2026〜28年にガス再価格付けやステート構造変更、実行ペイロードのブロブ化など高ガスリミットを安全にする調整、2027〜30年にzkEVMがブロック検証の主要手段になることを前提とした追加のガスリミット引き上げなど、段階的な調整が進むとの見通しを示した。
また、将来的な課題として「分散型ブロック構築」にも同氏は言及し、トランザクションの包含に関する権限を可能な限り分散させることが、検閲耐性や地理的公平性の観点から重要になると述べている。
こうした主張は、ブテリン氏が過去のエッセイ等で論じてきた「credible neutrality(信頼できる中立性)」や検閲耐性を重視する設計思想とも整合的だ。
一方で、分散性、セキュリティ、スケーラビリティといった概念は、ブロックチェーンごとに設計思想や評価軸が異なり、必ずしも共通の定義や基準が存在するわけではない。ブテリン氏が投稿内で用いた「The trilemma has been solved(トリレンマは解決されました)」という表現も、イーサリアムの技術構成や前提条件を踏まえた文脈で用いられている点には留意が必要だ。
同氏の投稿は、イーサリアムにおけるスケーリングと分散性の両立に関する現在地と今後数年の技術的方向性を示すものと位置づけられる。
画像:iStocks/Peach_iStock


